忘年会は欠かせない
中国語で「麺」は小麦粉そのもののこと、「餅」が小麦粉製品のことだ。
日本には形を問わず非醗酵の小麦粉製品をあらわすことばがないので、混乱を避けるため、「広義の麺類」とよぶことにする(イタリアのパスタ類もこれに入る)。
広義の麺類は、ドウをいろいろな形にこねてから加熱するもので、乾かして保存でき、煮て汁とともにかつた料理として食べることできる特徴で、パンに比べて簡単なので、始まったのはパンより古く、紀元前5000年ごろとされ、1説では、細長い形のものは中国では3世紀の漢魏の間といわれる。
だいたい日本の邪馬台国のころだ。
このような広義の麺類は大体奈良時代に日本に入り、数種類が平安時代にかなり普及した。
すべて麦粉を握手から形を整えて煮たり、揚げたりしたもので、粒食中心だった日本では珍しいものだったことだろう。
これら広義の麺類は唐菓子と呼ばれたこのうちの1つか2つヒントになって、日本の麺類生まれた。
唐菓子の1つに索餅というものあり、索のように撚ったピソという意味で、太く伸ばしたドウを2重にしてヒネつた、ネジリソ棒のような形をしていたらしい。
日本では、麦索と呼ばれた。
麦索は、奈良時代の終りごろには、今日の干うどんに近い、かなり細長い、しかも干して流通する食品になっていたらしく、田束麦・手束麦・乾麦・干麦などとも呼ばれていた。
また、宝亀元年(770)の銭用帳には、「索餅1百藁」とあり、「薬」という単位で数えられ、売買されたことからも想像される。
この「藁」という単位は索餅独特のもので、ほかにはみられない。
また、『延喜式』には、「索餅料 小麦粉1石5斗 米粉6斗 塩5升 6百715薬を得。
粉1升 4藁半を得」とあり、小麦粉と米粉をほぼ3対1の割合で使い、塩も使っていた。
また、「索餅を乾す龍16口、長さ3尺、広さ2尺」ともみえ、製造の過程で乾燥工程入っていたことがわかる。
粉1升で4藁半というのだから、1藁というのは2〜3合で、今日の干うどん1束ぐらいに当たろうか。
価格は推測によれば、3藁米1升と同じぐらいだった。
ただ計量単位には、他の唐菓子類と同じ「了」用いられている例もあり、このほう古いのかもしれない。
麦索普及してゆく過程で、いつのころからか、今日のうどんやそばのようにドゥを平たく伸ばして切るという技法と、そう麺のように油をつけて、手で引き伸ばす方法とに分れていった。
現在の中華麺の製法から推測して、手延べのほう中国伝来の方法で、麦索も、この方法でつくられていたのだろう。
前者は「切る」ことに着目して切麦と呼ばれ、熱くして食べるのを熱麦、冷して食べるのを冷麦と呼んだ。
冷麦だけがいまもことばとして残っている。
1方、別の唐菓子に混沌というものがあり、「うどん」という名のもとだといわれる。
むかし艦鈍にかならず梅干を添へて食し」 つまり、唐菓子の混沌、食物だからというので「阻鈍」と食偏に変えられ、熱いからというので「温鈍」となり、もう1度食偏に変えて、「脇鈍」となり、「うんとん」縮まって「うどん」となった、ということらしい。
こうくるくると字変わるものか、どうか知らない、とにかく理路整然としている。
本当だとすると、印象によって宇をつくり変えること、これほどひんぱんな事物はほかに例ないだろう。
「紐」は中国にはない字で、あきらかにこの目的でつくられた国字だ。
室町初期の辞典に「うんとん」あり、末期には「うどん」があるというから、この辺が「うどん」ということばの成立時代ということになる。
江戸時代には「うんとん」「うんどん」「うどん」並行して使われていた。
「混沌」に餉を入れた小麦粉の団子を煮たものといわれ、不定形で頭としっぽもないから、「混沌」と呼ばれたとか、熱い汁の中でころころしていて、なかなか箸でつまめない(つかまえどころがない)から、とかいわれている。
レシピから推測して、かなりトロトロしたものだったことだろう。
「混沌」というのは、混じり合っている未分化の状態をいうのだから、そんなトロトロした汁の印象からきた名かもしれない。
もしそうなら、今日の「山かけ」など、かなり「混沌」の原義を伝えているといえよう。
同じく唐菓子からとはいえ、起源と語源がくいちがっている、ともかくはじめ、熱くして食う「熱麦」「うんとん」または「うどん」と呼ばれ、やがて、「うどん類」として冷麦・冷しうどん・きし麺などを総称するようになったのだろう。
また、この説では、うどんに梅干を添えたこと記されており、今日からみれば珍しい寛永のころ出た『料理物語』には、「汁ぬき又たれ味噌よし、胡檄・梅」とあり、やはり昔は梅干がうどんに合うとされていたらしい。
変わったうどんに、「きし麺」というのがあり、名古屋のひとたちは「お茶でも飲もう」という代りに、「きし麺でも食べよう」というほど、名古屋地方では愛好されているそうだこの為体のしれない名は「薬子(碁石のこと)麺」からきたとか、中国の「雄子麺」の生ったものだとか、「雄麺」の生りだとか、紀州発祥の地で「紀州麺」の生りだとか、語源だけは賑やかだ。
それに「ひもかわ」ともいう。
これも紐みたいだからとか、芋川(地名)の生りだとか説がある・まさに混沌としていてヽなになにやらわからない。
香川県の讃岐うどんは、ドウの上にムシロを置いて、足で踏んで、ねばりを出してつくる太いうどんで、白くなめらかで、しこしこと腰強く、うどんというものの1つの典型だ。
私の友人には、朝めし抜きで東京を6時の新幹線で発って、宇野線・連絡船・私鉄と乗りついで、午後1時前に琴平に着くまで飲まず食わずいて、讃岐うどんを飽食するのをこととしているひとがこんにちのそば(そば切り)は比較的新しく、天正年間(1573〜91)に朝鮮の元珍という僧そば粉につなぎとして小麦粉を入れると、うどんのようにして食べられることを教えてからといわれている。
それまでは、そばねりやそばが原始的な方法で食べる救荒食物の1つだった。
そば切りは江戸で愛好され、少なくとも江戸ではロに麺類のことを「そば」というほど、うどんの上位を占めるにいたった。
「麦索」から「切り麦」、「うどん」、「そば」、「中華麺」、インスタントラメソ、カップ麺と、日本の麺類の技術と、日本人の麺類への愛着も長く、ますます多彩である。
パンは世界で古代最高の加工食品といわれている。
かたくて味もない穀物の粒柔らかくておいしいスポンジのような食品に変わる。
麺類やケキ、ク″キなど多彩な穀類の加工食品にとり囲まれた現在の私たちから見ても、すばらしい″変身″食品だ。
パンは古代エジプトで始まったといわれるたぶん、当時せいぜい穀物のひき割りを食べていた周囲の民族にとって、文明国エジプトのパンはよほど珍しい手品のように思えたせいだろう、エジプト人は「パンを食べる人」と呼ばれたという。
このことばには、今の私たち以上にパンに対する驚きと畏敬の念がこめられていた。
小麦は米と違って、かたい皮をかぶっており、また粒のまま精白するのがむつかしい。
だから小麦を主食とする民族の間では、小麦をひき割ったり、粉にひいたりして、お粥や平焼きにして食べる方法(粉食)が主流だった。
今でもこのようにして食べている人たちは多い。
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